健康コラム運動疲労
スポーツの秋、健康志向の高まりもあって本格的に運動に取り組む中高年の方が増えています。しかし、体力をかえりみず無理をしてしまう場合があり、疲労からストレスやケガにつながる場合もあります。
疲労の原因
- 1.オーバートレーニング
- 若い頃と同じつもりで、つい頑張りすぎてしまいます。まず若い頃との違いを自覚しておきましょう。
- 筋力などの低下
- 筋肉量や骨量は20歳代をピークに低下するため、運動量が同じでも疲労の度合いは高まります。筋肉痛や腰痛、捻挫、骨折などを起こすことがあります。
- 柔軟性の低下
- 関節やじん帯、腱など、体のクッションとなる部分が硬くなっています。柔軟性がなくなると筋肉の可動域が狭くなり代謝率が下がるため疲れやすくなります。
- 心肺機能の低下
- 心臓や肺の働きが低下し、動悸や息切れを起こしやすくなっています。
- 性格
- まじめ、熱心で凝り性、徹底的に取り組んでしまう人や、規律正しく、責任感が強い人、些細なことにこだわる人は、つい頑張りすぎて、疲労の自覚が遅れがちになります。
- 2.疲労物質の蓄積
- 疲労物質といわれるものには、乳酸,水素イオン,リン酸,アンモニアなどがあります。筋肉が活動したとき、一部の乳酸は筋肉内に留まります。留まった乳酸は筋肉を酸化させ、筋活動を阻害して身体に筋肉疲労を起こします。
- 3.栄養素の不足による疲労
- 筋肉は体内組織のなかに蓄えられているグリコーゲン(糖質)をエネルギーとして活動します。グリコーゲンの蓄えられる量には限界があり、強度で短時間の運動を行うと大量に消費されます。反対にジョギングやウォーキングなどの有酸素運動では、グリコーゲンを大量には利用しません。しかし、低強度で長時間の運動はグリコーゲンを徐々に減らしていき、その枯渇が疲労困憊の要因となってしまいます。
- 4.水分不足が引き起こす疲労
- 運動を行うと汗をかきますが、汗の成分の中にはミネラルも含まれており、発汗によってミネラルが失われます。筋肉が活動を行うと熱を発生させます。この熱はエネルギーの消費を促進させ、身体の疲労を早めてしまいます。
運動疲労の解消法
- 1.ストレッチングでリセット
運動で使用された筋肉は、容積が膨らんで張った状態になっていますので、そのまま放置しておくと硬くなって筋肉疲労につながります。そのため、ゆっくりとリラックスしながら筋肉の張りを取り除くストレッチを行い、安静時状態に戻していきます。
- 2.疲労を回復させる入浴方法
- 疲労回復の入浴の目的は、汗をかくことではありません。これは皮下の血流量だけが増加して、筋肉中の血液量は減少してしまい疲労物質は除去されません。疲労回復には37~40℃の低温浴が効果的であり、20~30分程度の半身浴をお勧めします。約20分間、ぬるめのお湯につかることで深部が温まり、体内の代謝能力が高まります。
- 3.疲労回復への栄養素
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- 糖質(炭水化物)の補給
- 運動で消費したエネルギーとは糖質であり、その補充も同様の糖質を補充する必要があります。摂取するタイミングとしては、運動後15分以内までが、最も多く体内に貯蔵できるといわれます。運動後になるべく早くに糖質食品を摂取するようにしましょう。
- アミノ酸(BCAA)
長時間の運動や激しい運動では、血液中のアミノ酸(BCAA)が少なくなり、この減少を感知して脳が疲労し、筋肉の活動を抑制させているといわれています。疲労回復に役立つアミノ酸を豊富に含む食材には、全卵、豚ロース肉、鶏ムネ肉、牛乳、ヨーグルト、チーズ、鮭、 イワシ、トマト、ジャガイモ、トウモロコシなどがあります。
- クエン酸
- クエン酸は柑橘系に多く含まれる有機酸であり、体内でエネルギーが生まれるときにクエン酸が使われます。エネルギーが活発に生産されると、疲労回復にも効果的です。
まとめ
- 疲労生活習慣病を予防する運動とは異なり、生涯スポーツを続ける方は、運動・休養・栄養のバランスを心がけましょう。
- エネルギーの備蓄には限界があるため、スポーツでの減少を防ぐには、その補充方法や補充する食品の種類に工夫が必要です。
- 発汗による体温の上昇は疲労を招き、筋肉の痙攣を引き起こします。発汗により失われた水分とミネラルを補充しながら運動しましょう。
- スポーツ障害を防ぐための基本は、ウォーミングアップ(準備運動)とクーリングダウン(ストレッチなど)をきちんとしましょう。
- 運動の強度やペースをうまくつかみましょう。「息切れしない程度、翌日に疲れが残らない程度」といった自分の感覚も目安としましょう。